多様化する高齢者ニ ーズに保険給付だけでは対応できない

佐々町住民福祉課係長の江田佳子さん多くの住民が生涯健康でいるために、介護予防の担い手として町内の65歳以上の元気な高齢者たちが立ち上がりました。結果として、20%を超えていた高い要介護率を改善しました。「高い介護保険料を下げたい」「保険料や国の制度に頼るだけでは必要なサービスを提供できない」と町と現場の保健士が地元の元気な高齢者にボランティアを呼びかけたことで、全ての町内会で、町民がお年寄りをサポートする体制ができあがっています。

佐々町住民福祉課係長の江田佳子さんにお話を伺うと、介護を受けていた方が、食事や運動で改善に取り組んだ結果認定が外れるまでの回復をされた。その方が、包括ケアセンターでサポートする側の活動を始められてすぐ「お茶を入れて」と強い口調で言われたとき、落ち込んでしまわれると思ったら「私、ものを頼まれた。私、誰かの役に立てる。ここにいていいのね」と受けとめている姿に感動されたと江田さんに教えてもらいました。

また、「熊本の地震で被災された認知症のお年寄りが落ち着き先のグループホームから包括ケアセンターに作ったカフェにいらっしゃると、佐々のお爺ちゃんたち、さらっと仲間にして一緒に将棋とかしてくれてるんです」と、笑顔で教えてくださいました。「住民の民さんのお力で運営していただくことで、私たち専門職や役場ではできない素晴らしい、人間らしい活動が実現します」といいます。

「介護を必要とする人を増やさない」「介護が必要だった人が自立できる」「さらに支援する側に回る」

佐々町介護予防強化推進事業取組報告より
国の政策や保険料は的確に活用しながらも、それでは賄えない予防と自立の支援活動を住民が担われています。それも、楽しそうに活き活きと町内会などの既存の集まりの中で実現してゆきます。担う佐々の自治の風土はなぜ生まれたのか。そんなことを考えがら、佐々町の保健士の皆さんの取り組みに注目したいと思います。

 


できていることの「継続」と改善可能なことを「増やす」ことに力点を置く

江田さんの資料を引用すると以下のように考え方が記されています。

 

住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、必要な人に、介護サービスを、必要な量、利用できるようにする そのためには、住民から預かっている保険料が、権利意識で使用されることなく、必要な人に適切に使われるようにする(介護保険法第4条 国民の努力及び義務の再確認) 。できないことの「お手伝い」ではなく、できていることの「継続」と改善可能なことを「増やす」ことに力点を置く。要介護認定を“卒業”した後も、安心して自宅で生活を続けていけるように体制を整える。多様化する高齢者ニ ーズに保険給付だけでは対応できない。

 

参考

佐々町/福祉

佐々町/包括ケアセンター

佐々町介護予防強化推進事業取組報告

地域包括ケアに向けた佐々町の取り組み

「佐々町介護予防ボランティア」の地域デビューを促進する介護 予防事業の展開 

nhkクローズアップ現代介護予防を担う高齢者ボランティア


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今後取材したい、書きたい記事


介護認定率が激減した背景、はなに?

謙虚で先鋭な保健師、ケアマネージャー、看護師たちの挑戦を難なく実現したのは自治会に集まる人々

 

介護保険制度と年金制度があれば、実は大抵の人は安心なんです

大抵の人の老後が大丈夫なように制度は設計されています。でも要介護認定とサービスに頼りきりになるよりも、その制度の外でギリギリまで楽しく暮らす方法がある。佐々の保健師たちはそこに挑戦した。結果的に医療費、保険料負担が下がり保険組合の財政は健全に。そして、町民の健康寿命が伸びてゆく。

 

歳をとったら佐々に行けという人々

周辺自治体の人々から聞かれるようになった。

 

おばあちゃん!ゴミのなかとね!

中学生が通学のついでに一人暮らしのお年寄りの家のゴミ出しをする

 

利用者が減る?いや手伝う!

介護認定が外れる。認定にこだわらない役場のスタンスと、本来利用者が減るはずの事業所の理学療法師が手伝った結果起こったこと

 

私結婚して佐々に来て良かった

街の人たちば子供を見守ってくれる。心配なんてしたことない。介護予防の活動を仕事にした時、後戻りできない幸せを得てしまった。

 

看護師の資格は持っていたけど

10年専業主婦をやって、町に恩返ししたいとは思ったけど、自信がないので、ケアマネージャーの資格を取ってから包括ケアセンターに仲間入りした

 

母さん、長崎の街でも100歳体操するバッテン、まっとってよ

佐々町でできたこと、いいことは自然に県内、県外に伝わって行くと思うと、自分の出身地、自分の親に話す人

 

早くお茶ちょうだい!って言われた

利用者に厳しく言われたボランティアスタッフ。「私にやることがあった!嬉しい」という。人前に立つことも難しかったおばあちゃんが、お世話する側に回って幸せになって行く

 

将棋しているだけで褒めとらす

おしゃべりは苦手でも、よそから来てもすぐ将棋の仲間に入れてしまうのはおじいちゃんたちの得意技

 

佐々って、よその人を差別しないの

本当に、ここに来て良かった。すぐに地元の人としてなんでもさせてくれるんだもの

 

なぜって、だって、地域の方々に励まされるから

保健師、ケアマネージャー、看護師たち、そして、役場は、なぜ、この集団は住民にを主体にできたのか。なぜ、信じ抜いて、活動を任せることができたのか。